青春小説(予定)の断片    ※最後の模擬授業

その日の授業は、自分がこれまでに経験した中でも、一二を争うつらいものだった。十人余りの小規模講座だが、たぶんほかの学生も皆、同じ思いを味わったに違いない。

 

自分たちは、英語の教職課程の履修生である。ネイティブ講師による「英会話」の授業も必修である。英語で話したり、話しかけられたりしたことが無いわけではない。だが、その日は「日本人による全編英語での授業」、「英語教職課程主任講師川崎先生の英語授業」そして「他の講座の担当講師による見学」に、クラスのみんなが緊張してしまった。

四月に始まった講座だが、ゴールデンウィーク明けには授業が少し変わるかも、と言う噂は聞いていた。しかし「全編英語」は、誰も予想していなかった。誰かにそう言われたわけではない。しかし、自分たちは、それまでの学校英語の経験から、「英語の授業」は、「日本人の先生」が、英語の「文法」「表現」などを「学問のテーマ」のひとつとして「日本語で」教えるものだと勝手に思い込んでいた。今考えると、まったくおかしな思い込みだが、あまりにもそれが普通で、クラス全員が、そう刷り込まれていたのである。