青春小説(予定)の断片     ※最後の模擬授業

「それから、ひとつ、これはとても大切なお願いです。」

「自分で言うのもなんですが、私は一定の英語コミュニケーション力を身に着けています。それでも母国語は日本語です。日本で育ち、大学まで日本語を以て教育を受けました。皆さんと同じ年齢のころに海外留学経験はあります。その後も海外へは、不定期ではありますが、短期で勉強に行っています。しかし、現在の私の生活基盤は日本にあります。従い、私にとっても、全部英語の授業と言うのは、かなりの労力を必要とします。」

「お約束します。皆さんに最大の効果があるように取り組みます。ですから、皆さんも照れずに大きな声ではっきりしゃべることを心がけてください。間違いは気にしないでください。私達は、母国語である日本語でも間違いを犯します。小学校から今まで、国語のテストは全部100点だった!と言う方いますか? いませんね? 学ぶ対象は外国語であります。間違いはあっても良いのです。それよりも、小さな声で自信無げに話すと、通じるものも通じなくなります。つまり、この授業で目的とするコミュニケーションが成立しないのであります。」

「文法はもちろんですが、英語の「音」は、日本語と違うのであります。日本語のような高低ではなく、強弱のアクセントにより会話が成り立つのであります。伝えたい部分にアクセントを置くのです。抑揚無しに、もぞもぞとくぐもって話しても相手には通じないのであります。」